こんにちは、HERZオンラインショップの松下です。
今回は新作ラップフラップミニショルダー(CP-6)を手掛けた、ベテラン作り手:NEZにインタビュー形式でお話を伺いました。
NEZと言えば、創業者の近藤とともに初期からヘルツを作り上げてきた大ベテランの作り手の一人。
早速お話を伺おうとしたところ、当日NEZが持参してくれた大量のスケッチの山が!
(実際のスケッチ。何十年も前のもあるよ、と沢山見せてくれました。)
松下
「すごい量のスケッチですね!新作づくりの歴史が詰まった、貴重なお宝資料という感じです。NEZさんは、新作づくりの際は大体いつもスケッチを描いているんですか?」
NEZ
「そうだね。なんとなく手が動いて絵描いていて、これ作ってみようかなってなることが多いね。今回は、中の荷物を保護するような、外は固くて中が柔らかい鞄をイメージして作りました。中は内縫いでふんわりさせて、外側は厚みのあるハードレザーの外縫いでラップ構造にして、包み込むような感じかな。」
(横から見た様子。中の荷物を保護するようにハードレザーで包む、ラップ構造となっています。)
松下
「ふむふむ。中を包み込むようなラップ構造という点で見覚えがあるなと思ったのですが、実は最近のNEZさんの新作鞄によく登場するつくりですよね?一連のシリーズ感がある気がします。」
NEZ
「そうそう。この包むようなラップ構造はそもそも9年くらい前に思い付いたもので、本店で色々サンプル品を作ったりして販売していたんだよ。それで2014年~2015年頃に煮詰め直して、定番化したらいいなと思いながら色々作っていて、フラップセカンドバッグ・仕切り付き(S-1)とかラップフラップダレスバッグ(BJ-9)、ラップフラップ2wayビジネスバッグ(BW-4)なんかが先に出来ました。」
NEZ
「そういう一連の流れで、この新作ミニショルダーも去年形になって、今回新作として出来た鞄だよ。」
松下
「そうだったんですね。今回新しくショルダーバッグも加わって、ヘルツに新たな『ラップシリーズ』が出来たような印象もあります。」
普段使いにちょうど良い鞄
松下
「今回は比較的小さめのショルダーバッグですが、これは何が入るサイズ感をイメージして作られたのでしょうか?」
NEZ
「メインは長財布が入ってほしいっていう想いがあったから、ヘルツの長財布が丁度入るサイズ感で。ファスナー長財布(WL-58)や、ヘルツで一番分厚いダブルフラップ長財布(WL-2)もぴったり入るよ。それと普段使いで持ち運ぶようなキーケースとか、スマートフォン、小銭入れなどが丁度入る大きさということで考えていました。」
NEZ
「前ポケットと収納部を分けたのは、スマートフォンや定期入れが分けて入れられたら便利かなと思って。自分が使うことを考えながらハードレザーで作ってみたんだけど、お店を見ていると結構女性の方がサンプルを買ってくれることが多かったんだよね。それが意外だったなあ。」
松下
「それはたぶん、最近街中でこれくらいのサイズ感の鞄が流行っているのが少し影響しているかもしれません。スマートフォンとか財布だけを入れるような、必要最低限の物だけを入れるコンパクトな鞄が人気なんですよ。」
NEZ
「え?そうなの?知らなかった!(笑)」
松下
「今のお話を伺っていると、NEZさんは特に時代の流れを意識して作った訳ではなかったようですが、今の時代のニーズともすごくマッチしていると思います。」
NEZ
「全然意図していなかったよ。いま二部屋ソフトショルダー(CK-8)を5年くらい使っていて、そろそろ違う鞄もどうかなと思って作ってみたりもしてね。自分が使うならこれぐらいの収納力が良いかなと思って作ってみました。本当にたまたまだね。」
松下
「そうだったんですね。まさしくヘルツらしいというか、流行に捉われない鞄づくりの中で出来上がった鞄が、今回のように性別や年代を問わずお使いいただけるという事が、ヘルツならではの形なのかなと思います。」
NEZ
「流行っているという話なら、最近俺の中でこういう革で包む構造が流行ってるんです。ここのところ作っているのはこういうイメージなんです(笑)。」
隠れたこだわりのポイント
松下
「スケッチや試作の段階からほとんど変わっていないようですが、こだわったところやポイントがあれば教えて頂けますか?」
NEZ
「あのね、本体のかぶせを丸い形にしたかったんだけど、そうすると前ポケットの端がはみ出て見えるのが何だか美しくないなと思って。それでかぶせの中にしっかり収まるように、ポケットの前面の革を伸ばしたんだよ。」
松下
「なるほど!この一手間が加わることで、前から見た時すっきりとした仕上がりになりますね。」
NEZ
「で、ポケットの前面を伸ばしたことで、フラップとして包み込んでいるようなイメージになったよね。前ポケットのフタとまでは言わないんだけど、中が見えにくいのと零れにくくなったのかなという気はする。」
(縦に伸ばした前面の革が、フラップとしてポケットの収納部を覆っています。)
松下
「確かに!見た目のイメージだけでなく、機能的にも更にまとまり良くなったように思います。」
※ラップ構造=包み込む構造のこと。
※フラップ=かぶせ・蓋状のパーツ全般のことを指しています。
NEZ
「もう一つ言うと、実は少し台形のシルエットにしました。四角にすると少し張り出してしまうので、前から見ると下が少し広がっているように、、、。俺がこれまで作ってるのはこういう、下が少し広がっているのが多いんだけど、スケッチするときの手癖かもね。」
松下
「改めて見ると、スケッチの時点で少し丸みがありますね。ほんの少しの違いですが結構印象が変わるなと思います。」
NEZ
「大きさと見た目の雰囲気とか、末広がりで角が丸くて少し可愛い感じが良いかなと思って。そもそもの構造自体は前から作っていたり考えていたものだから、特に難しいとかの問題はなかったけどね。ちょっとしたこだわりの一つです。」
鞄づくりで伝えたい想い
松下
「NEZさんといえば、創業者である近藤さんとともにヘルツの初期から土台を築き上げて下さっている方の一人だと思うのですが、NEZさんが新作づくりをする際に大事にしている事や、お客様への想いを教えて頂けないでしょうか?」
NEZ
「そうだなあ。新作づくりの話で言えば、ヘルツの鞄は丈夫さを一番に大事にしているから、お客さんにはとにかく長く使ってほしいっていうのがある。だから物にもよるけど、基本的にはあまり細かく作り込みすぎないようにしているよ。」
NEZ
「あとは、しっかりしたステッチを見せたいなって思う。厚い革を縫っているから、ヘルツの鞄は太い糸でステッチがザクッと入っているのが特徴な所があるので、それがヘルツらしい魅力となるように作ってあると良いなと思う。」
松下
「確かに、力強いステッチはヘルツの大きな魅力の一つですね。街中でパッと視界に入るだけで『あ、ヘルツの鞄だ!』って気付きますし、特徴的だと思います。」
NEZ
「素材が厚くて固い革だから、どうしてもこうならざるを得ない所もあるよね。自分でも使う時には、柔らかくて軽いっていうのは結構大事だなって思うけど、一方でやっぱりヘルツらしい固い革でつくるカチッとした物が、何だかんだ昔から好きなんだよね。」
NEZ
「近藤さんはどちらかというと豪快な鞄を作ることが多かったけど、俺はこういうビジネスバッグとかカッチリした鞄が多いかもしれない。ビジネスバッグだとどうしても革をたっぷり使うから少し重いんだけど、小ぶりの物だと『ヘルツのラティーゴ』っていう革の持ち味が良くわかると思うし、革好きな方は楽しめるんじゃないかと思います。」
松下
「なるほど。もちろんスターレやタンドーといったそれぞれの革の良さがあるので、そういった革の個性も含めて色々なヘルツらしさを楽しんでいただきたいですね。」
NEZ
「そうだね。あとは、サイズにも形にもどんなものにも、理由があってやっているわけじゃない?ヘルツではデザイナーがいない中でいろんな人が自分が良いと思うデザインで作っていて、必ず良い部分があるのね。自分の感覚で言うとちょっとここは違う方がいいなとか、色々意見はあるかもしれないけど。その良い部分に誰かしら共感できる部分が、絶対何かあると思うから、それを探してくれるといいのかなと思う。」
NEZ
「何ていうかなあ、、、人って毎日毎日新しいじゃない。いろんなことを考えながら生きていたとしても、昨日と今日は違くて。新しい情報が入ってきて、また違っていく。持ち物もたぶん同じで、5年前とは随分違っていていると思うんだよね。もっと前にはスマホなんてなかったんだし。だからあまり作り込んでいなくて、パッと見た時に良いなと思ったものが良いと思う。そういう形と素材を楽しんで貰えれば良いのかなと思います。」
松下
「凄い素敵な考え方ですね。身に沁みました。」
NEZ
「ヘルツの鞄は必ずしも万人受けするものとは思わない。けど、長く使って愛着が沸くようなものがいっぱい並んでいると思う。色んな人が作っているからね。この先も色んな新作がいっぱい出てくるからね、きっと。今回の新作ラップフラップミニショルダー(CP-6)も、良いなと思ってくれた方に少しでも長く愛用してもらえたら嬉しいです。」