定番商品よりも挑戦的なサンプル品。
そのときどんなことを考えて、何を体現したくて、作るまでに至ったのか。
既に仕上がった鞄を軸にして思い出してみようという、口数少ない村松による
いつの間にかモノローグ形式の試作レポートスピンオフ企画。
第5弾は、丸大オコシ二つ留めの、こちら
この鞄、正直に言うと、イメージ通りには出来てない。
というか、「最初のイメージ」がはっきり決まってなかった。
今思い返すと、
上半分の堅いフタの部分と、柔らかい下半分の本体部分を、
うまくつなげる為の構造を考えていて
そこに執着しすぎちゃってたかも。
作ってる最中も、「う~ん、どうだろう?」と自問自答しながら、
少しずつ進めていたんだけど、結局 最後の最後まで
迷いながら作ってた。
完成した鞄を見ても、やっぱり
「う~ん、どうだろう?なんか自分が作った鞄に見えない…」
前面上半分にフタと同じ形の厚革をあてて、
補強も兼ねたファスナーポケットにしてみたり、
本体の柔らかい革に大きく切り込みを入れて、外縫いすることで
マチのふくらみを抑えたり
と、考えてたことは大まかうまくいってるんだけど…
あとこの鞄自体の、昔のボストンバッグであるようなダボッとした感じ、
厚くて、柔らかくてシボが多い革も
いいと思うんだけど…
なぜか「やったー!できたー!」
って感じにならなかったんです。
今回、ふり返ってみて気付いたんだけど、
自分の場合、スケッチの時点でその「理想の形」が
イメージできてるか、できてないか分かってるのかも。
この鞄を作る前は、まだイメージできてなかった。
それは今、このスケッチを描いてみて そう思ったんです。
このスケッチは気に入ってる。
(最初のスケッチと同じに見えなくもないんですが、、)
(きっと今のほうが作る前よりイメージがはっきりしてきたんでしょうね)
これを目指して作ると自分がいいと思える鞄ができる気がする。
「自分がイメージした理想の形が見たい」
それが作る理由の中で一番強いかも。
続く
編集と文:岡松