「本体の構造を全く変えたのに顔が同じってのが、本当うまくできたと思う」
A’-2
これは、現存するクラシックライン(A品番)をベースに村松が新しい鞄を作るという、
創業者:近藤発信、鞄を通じて2人が綴る不定期更新コンテンツです。
<ファーストサンプル>
先ずは本家:二本ベルト2wayショルダー(A-2)を前に
特徴は、やっぱりこのマチ付きの前ポケットじゃない?
こんなにマチ幅が広い前ポケットは他にない。
最初、A-2は本当にヘルツの鞄の基本みたいな作りで、シンプルすぎて
これはこれで完成されてるから、わざわざ自分が変える必要ないとも思った。
けど、まずは細かい部分の作りを、自分だったらこう作るってのを考えてた。
取っ手の仕様とか、ショルダーストラップのD管の位置、前ベルトのつけ方・太さ・・・
で、ふと3wayにしようかなって背中のあたりのこととか考えてた時に
外縫いだと身体に当たって痛いから、以前作ったリュックの構造が使えると思った。
そうしてできた第一号。
前面側のやわらかい革にかたい革の前ポケをつけるってのはやったことなかったけど
意外とうまくいった。
全体の構造は問題なさそうだけど、前ポケの位置が上すぎて安定感がない・・・。
前ベルトの太さかな、、迫力ないなあ
後日。
微調整をしながらもう1本・・・
<2本目>
前ポケットの位置、うまくいった。前ベルトの太さも3cmにしてバランスは良くなったと思う。
仕上がった鞄を手に、近藤の元へ向かいます
<近藤×村松ダイアログ>
そもそも、なぜA-2(二本ベルト2wayショルダー)を課題にしたのかという問いから対談はスタート
近藤 さっぱりした鞄ほど変形しやすいでしょ。自由に。
これは、僕の作った定番商品の中でも特に、「まるで普通」
まじめに、気負いなく作った鞄なんだ。
取引先からいつも、「おまえもうちょっとまじめに作れよ」って言われてて
(というのも、後に登場するカブトムシ(A-3)やポーランド(A-4)の原型みたいな変わった鞄
ばっかり作ってたからなんだけど)それで作ってみた鞄なの。
まあ、そういう中でも、3.5mm厚っていう極厚の革と一番大きいカシメしかない、ていう
制約の中での「普通の鞄」で。
それがシンプルにHERZを体現してるかなと思うから1本目にはいいかなと。
話はA-2の魅力、象徴するパーツについて及びます
近藤 A-2はね~、盤面に対しての前ポケットの中途半端さ、宙に浮いてる感じがいいんだ。
でも取引先にはすごい批判されたんだよー
『前ポケット、おかしいでしょ。普通、このサイズにするならマチなしか、
マチ有りにするなら盤面サイズにするのが常識でしょ』みたいに。
村松 そうなんですか!
近藤 そうそう。でも、このダサい違和感がいいなと思って。ここは残したいと思ってたんだ。
村松 僕も同じ部分を残すと決めていました。
でも違和感は感じない、、、むしろそこがかっこいいと思ってるんですけど。
近藤 いや、やっぱり一般的ではなかったみたい。これはうまく雰囲気を残せてるよね~。
作った本人と他の人間では同じ部分でも見方が異なるということなのか、
兎にも角にもこの鞄を形成するポイントは同じだったようです。
<3本目>
作業台に戻った村松は意欲に燃えていました。
せっかくなのでキャメルで1本作ろうと思って、もうひと工夫。
この鞄は、作る過程で背面がすごく大きい盤面になるんだけど、そこに前ベルトを
縫い付けるのが作業的に大変で(盤面をぐるっと縫いながら1回転させないといけないから)
効率を考えて、前ベルトの付け方を変えることにした。
この時点で、“本体の構造が全く違うのに鞄の顔はなんとなくA-2”っていうのが面白くなってたから、
前ベルトの付け方も無理に変えるんじゃなくてどうせならまったく一緒にしようと思った。
と、結果、前からの見た目は全く変えずに構造を変えることで一旦の完成をみたのでした。
A-2は以前から好きな鞄で、その理由は前ポケットのマチ幅が広いところ。
近藤さんは「普通」といいつつも、この違和感のある、、、広すぎる前ポケマチを残したことで
A-2はやっぱりただの普通じゃなくなったと思う。
この前ポケのマチ幅も加わった鞄全体のボリューム感と、その迫力がA-2の魅力。
いろんな部分を意識的に変えようとしたり、逆に最後はA-2に寄せてみたり、
自由にといいつつ、普通の試作だったら絶対やらない挑戦がたくさんある。
うまくいきすぎて、、、ここで終わりにした方がいいかもしれない。
第一弾にして最高峰?!
編集と文:岡松
今回のベースモデル:二本ベルト2wayショルダーバッグ(A-2)