HERZ創業者である近藤晃理の、「作りたい!楽しい!」という想いから全てが始まった鞄屋。
機械的な分業体制によるモノ作りではなく、手間と時間がかかっても、作り手の作りたい気持ちを大事にした鞄作りを創業からずっと続けています。
一人の作り手が一通り仕上げ、作り手の人格が宿るような、血が通っているものを「HERZの鞄」としたい。
HERZのカバンのステッチに目をこらしてみて下さい。少し曲がっているかもしれません。
でも、そこからミシンを踏みしめる作り手の息吹が感じられるのではないでしょうか。
革の個性(シワやバラキズ)と同じように、作った人の顔が見える鞄作りをしています。
一枚の革からたくさんの工程を経て、立体的な鞄が仕上がります。
HERZでは、革の裁断を除く全ての工程を一人の作り手が完成まで手掛けます。
鞄作りには、大きく分けて5つの工程があります。
1.裁断
全ては革の裁断から始まります。
HERZでは革の裁断専任の作り手が日々製作する全ての裁断をしています。
革の特性や一つ一つ製品の構造を分かっていないと出来ない裁断は作り手の中でも経験を積んだ者が担当しています。
一つの鞄でも型紙は数十パターンから成ります。
定番品が数百型を超えるHERZでは、膨大な量の型紙が工房にストックされています。
型紙を管理・更新する仕事も裁断担当の作り手です。
2.漉き
盤面やマチなど革が重なり合う箇所は漉きます。
革の漉きは最も難しい工程の一つです。
薄めに漉けば後の工程である縫製や成形も楽ですが、漉きすぎると丈夫でなくなります。
HERZでは丈夫さを第一に考えたモノ作りをしているので、漉きも出来るだけ厚い革のままで。このさじ加減が非常に難しいです。
ミシンや漉き機など使用する機材のメンテナンスは作り手が毎日点検します。
3.磨き
革の切り口(コバ面)に染料を入れて磨く工程は全て手作業です。
製作机の端に革をあわせて、ぎゅっと力を込めて磨きます。
HERZの鞄から自然で優しい感じを受けると言われることがあります。手作業で革の切り口を磨いているからかもしれません。
ある時は指先で優しく。ある時は腕全体で力強く。革の表面にまで磨きが入ること。
これは手作業でなくてはできないことなのです。
4.縫製
鞄作りの醍醐味でもあるミシンでの縫製工程。作る鞄や小物によって、ミシンも使い分けています。
太い針と太い糸で力強くステッチを刻む HERZの顔とも呼べます。
5.成形
内縫いの鞄や小物は縫製した後、鞄を表面にひっくり返す工程があります。
一見、簡単そうに見えますが、厚い革で作っているので、ひっくり返すのにも技術が必要です。
その後、全体的に形を整えれば完成です。
※完成品
他にもたくさんの工程がありますが、こうしてHERZの鞄は作られます。
一人の作り手が完成まで手掛けるので、同じ商品でも磨きの入り具合やステッチのピッチなど一点一点異なります。
その鞄の個性をお楽しみください。
クラフトで一般的な用途で使われている道具たちは、HERZの鞄を作るために使うとだいたい耐えられません。厚い革と太い糸で武骨に仕上げるHERZの鞄作りを実現するには、通常とは一線を画した、ある意味、強引な道具の使い方をする時も間々あります。
その作業に「普通は」使わないアイテムから骨董市や金物屋さんで見つけた掘り出し物、ホームセンターでよくある工具、はたまた自分で加工して使いやすくした逸品まで作り手の「手」となる工具を一部ご紹介します。
ハンマー
カシメやホックを留めたり、革パーツどうしの糊づけを定着させたり。特に金具を留める際のハンマーは、HERZの分厚い革を挟んで打つにはかなりの力が必要です。
工程によって、小さいものやプラスティックのものなど使い分けています。
ポンチ、楕円、R取り
穴を開けたり、革の端をカットしたりする時に使います。大きさと形状によって、十数種類あり、仕上がった時の見た目を左右する重要なパーツです。
トウフ
金具を留めるために下に当てる金属製の台。直方体が多いことからいつの間にかその名前に。まさに縁の下の力持ちといったアイテム。
打ち棒
カシメやホックを留める際に、金具に当てて打つためのもの。長年打ち込むと、上部が変形し、きのこような形になります。
罫書き、デバイダー
革を裁断したり、金具を取り付けるための印をつける道具。デバイダーは、平行線を引く時に使うけがき。骨董市で調達する作り手も多いです。
ピーラー、鉋
革の縁をななめに、時に垂直に削る時の道具。ななめの削りは特にウォッシュ加工など、ナチュラルな雰囲気の鞄やカジュアル感のある鞄によく使います。
やっとこ、ペンチ
革パーツを糊付けして貼りあわせる時などに使用します。革が傷つかないよう、先端を丸く削ったり革を当てたり各々で加工しています。
ガリガリ、糊ケース
糊をつけやすくするために革の床面を「ガリガリ」加工する道具。金属やすりだったり、金属ブラスだったり、謎の骨董品だったり。革を貼りあわせる糊の専用ケースは、日本では珍しいようです。