定番商品よりも挑戦的なサンプル品。
そのときどんなことを考えて、何を体現したくて、作るまでに至ったのか。
既に仕上がった鞄を軸にして思い出してみようという、口数少ない村松による
インタビュー形式の試作レポートスピンオフ企画。
第一弾はこちら
カゴみたいに使えるトート
これの始まりは全くのイメージ先行。
なんとかマーケットみたいな市場に置いていそうで、普段使いじゃなくて、
大きな荷物を入れて、カゴみたいにラフに使う鞄。
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ってとこかな。
(部屋に置いたり、車に積んだりってやつですかね、バケツ型トートT-70みたいな)
うん、、まあそう。
イメージはあったんだけど、そこから
ラフに使うなら鞄自体が大きくて、外縫いで
地面にどんと置くでしょ
取っ手も強い方がいいし・・・(と思いは巡る)
革を探してたらこれにぴったりかもっていうのを見つけて。
そこから作ることにした。
最初は、ふとーい十文字みたいなパーツを合わせて上に
一気に縫い上げるっていう感じを想定してたんだけど、
底面だけを四隅の立ち上げにして。
底面と盤面のパーツを分解したっていう結果になった。
大きい盤面だから、強度はすごく考えたよ。
これは地面に置いて変形しても、
コバで支えられてステッチが地面に当たらないんじゃないかと思って。
取っ手も強度があった方がいいから、分厚いパーツだな・・・
で、あのとき取っておいたパーツが使えるかも?!って引っ張り出してきて。
なんでも、HLMと呼ばれる限定鞄を担当したときに大量に出た
このファスナーのくり抜きパーツを律儀にとっておいたとのことです。
ポンチ穴はそのままほっときました。
ほらここ
かっこいいと思ったからです。
取っ手は、2枚を合わせて縫うのを、いつかやってみたくて。
強度があるから、大きい本体の今回にはもってこいだなって使ってみた。
よく見ると盤面を2本のベルトが挟んでいます
裏から縫って、表を貼って、全体を縫って。
(・・・とってもややこしい作りをしていますね。)
・・・ややこしいね。まあこれはサンプルだからゆるしてってことで。
あと、取っ手からひとつづきで縫う内ポケット。
これも前からこの部分だけ頭に浮かんでてやってみたんだけど、、、
今見ると、このひと続きのつけ方がラフなこの鞄に合ってない。
このアイディア自体は、別の鞄でメインにできるくらいの内容だと思うけど。
後面側のステッチとカシメのポケットの方が似合ってて、これだけでも良かったかな。
(まあ、機能としては大きい鞄にはポケットが多いほうがいいと思いますが)
作り手は思いついちゃったアイディアをどんどん盛ってしまうもので
潔く省かないとダメだなと勉強になった鞄です。
小さい内ポケットがついてないバージョンは、また今度・・・
(ところで銀金具は珍しいと思うんですけど、なんで銀を合わせたんですか?)
うーん・・・
なんていうか・・・このヌメは、着色されてない、革そのままの色で。
銀の方が、着色されてない感じがこれには合うかなと思ったんだ。
お客さんが修理で持ってこられた鞄を見たとき、金具も銀地の色が出たり
変化したりしてて、それもすごくかっこよくて。
ラフに使える⇒地面に置ける⇒大きくて、底面がコバで支えられて、取っ手も2重
で、こうなったって感じ。
(最後の最後で整頓されましたね。)
続く
編集と文:岡松
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