思い出の一品 vol.7 セイジ×学生鞄風・2wayビジネスバッグ(BC-16)

思い出の一品 vol.7 セイジ×学生鞄風・2wayビジネスバッグ(BC-16)

こんにちは、HERZオンラインショップの松下です。

現在ある定番品の中で、思い入れのある革製品について、毎回異なるスタッフにお話を聞く「思い出の一品」コーナー。
第7弾となる今回は、ヘルツらしい堅牢で飽きのこないクラシカルさが魅力の、あのビジネスバッグに注目しました。

第6弾はこちら:思い出の一品 vol.6 青木×アオリノハンドバッグ(Q-9)

ということで、早速お送りします。
気になる今回の製品は、、、

 

学生鞄風・2wayビジネスバッグ(BC-16)

学生鞄風・2wayビジネスバッグ(BC-16)

ヘルツらしさ満点のロングセラーアイテム、学生鞄風・2wayビジネスバッグ(BC-16)に注目しました。

厚みのあるラティーゴハードレザーを使用した本体で、しっかりとした頑丈さが伝わってきます。
どこか懐かしさを感じられるような、クラシカルな2本の前ベルトや、
前面の特徴的な立体のポケットは、デザイン性と利便性の両方を併せ持っています。

 

学生鞄風・2wayビジネスバッグ(BC-16)の収納例

A4E規格のため、リングファイルや封筒もすっぽり収まります。
ショルダーストラップも取り付けできる2way仕様ですが、しっかりと厚みのある頑丈な取っ手で手持ちのみでも十分に活躍します。

そんな学生鞄風・2wayビジネスバッグ(BC-16)について、なにやら印象的な思い出があるとの情報を入手したので、こちらの作り手にお話を伺いました。

 

今回のスタッフ:作り手 セイジ

今回のスタッフ:作り手 セイジ

今回お話してくれたのは、作り手のセイジ。
普段はNET工房(旧渋谷工房)の制作スタッフとして、ビジネスバッグやショルダーバッグなど幅広い種類の制作に携わっています。
また、通常の制作業務に加え、全国にあるヘルツ各店舗のスタッフたちと幅広く連携をとり、
NET工房の責任者としてヘルツ全体の店舗運営に深く関わる業務を多数担っています。

セイジ
「趣味、、無趣味なんだよな、、、今は仕事と家庭が一番で、、、。」

インタビュー中、「好きなこととか趣味をお伺いしてもいいですか?」と聞いたところ、
まさに「仕事に生きる作り手」という回答が。セイジらしさが伝わるエピソードです。

 

思いを語る

思いを語るセイジ

セイジ
「話すことそんないないんだよなあ、どうしようかなって思って、申し訳ない、、、。」

松下
「今までの人みんなそう言ってたので大丈夫です!(笑) よろしくお願いします!」

セイジ
「えっと、BC-16はね、入社して最初の頃に制作を近藤さん(ヘルツ創業者)から指導してもらってて、最後に卒業制作じゃないけど、鞄一個何か大きいものを作るかみたいな感じで作ったのが、BC-16だったんだよ。

当時、近藤さんは渋谷工房の上のフロアに居て。新人はまず上に行って近藤さんのもとでショルダーストラップを作ったり、練習用の鞄を作るっていう流れだった。ミシンに慣れるためにひたすら上で練習して、半年くらいしてある程度ミシンを踏めるようになってきたら、メインの制作場がある下の階に降りて本格的に作るっていう感じだったね。下にも教えてくれる人はいたけど。」

松下
「へえー!創業者の近藤さんが直々に教えてくれていたんですね!当時は近藤さんが一人一人に教えていたんでしょうか?」

セイジ
「そうだね。付きっきりっていうわけではないけど、ちょこちょこ近くで教えてくれるっていう感じかな。」

松下
「なるほど~。作る鞄でBC-16を選んだのは近藤さんですか?」

セイジ
「たぶん、、、そこははっきり覚えていない。何しろ12~13年前の話だからね。そういえば、当時入社してすぐ、ベテラン作り手の鈴木から緑のエプロンをくれたこともあったなあ。」

 

入社直後のセイジの様子
(なんと、当時の写真が残っていました。今と変わらない眼差しが印象的です。)

セイジ
「それで、鞄が出来上がって、最後に全体をチェックしたら正面の目立つところにズバッと大きな傷があって。

松下
「えー!?それは、何の傷ですか?何か引っ掛けちゃったとか、、。」

セイジ
「それが分からないんだよね。(笑) なんでついてしまったのかも分からず。気付いたら傷があった。」

松下
「うわあ、それはショックですねえ、、。近藤さんには結構怒られました?」

セイジ
「いや、それが全然怒られなかった。『なんでだろうね?』くらいで。正直俺がつけてしまったのかも分からないから。でも目立つところについてしまったから、普通に売ることが出来なくてすごくショックだったねえ。当時はまだ慣れてないから、ほぼ1日かけて作ったんだけどなあっていう、、。(笑)」

松下
「なるほど、ちょっと苦い思い出ですね。でも近藤さん優しいですね!ともすれば、もっと厳しく怒られそうな所ではありますが。」

セイジ
「いや、近藤さんは逆に優しかったなあ。それより、下に降りた時の方が厳しかったよ。(笑) 下でもいろいろ失敗したけど、俺はたぶん、他の人よりも上に居た期間が長かったと思う。手間のかかる新人だったのか、気に入られているんじゃないとか言われたりもしたけど、長く居させてもらって、ずいぶん良くしてもらったね。どれも懐かしいなあ。」

 

当時の記憶

当時を振り返るセイジの様子

松下
「初めて作ったとき、BC-16は難しかったですか?」

セイジ
「どうだったかなあ、、、でも、そうだね。外縫いのところがね。こういう角の所の縫いとか、厚さを残したままで縫っていくっていうのは、当時はまだ感覚とか全くつかめていない状態で、一針ずつ縫っていく感じで、いちばん難しかったかなあ。それに、これを作るまでは練習で小さめのものしか作っていなかったから。」

 

(画像クリックで拡大できます)

セイジ
「重さに関しては、今じゃもう慣れて忘れちゃったなあ。当時は確かに重かったと思うよ。若い人とか見てると、『なんでそんな大変そうに縫ってるの』って言っちゃったりもするんだけど。持ち方とか取り回しのコツっていうのは、やりながら覚えていくものだから、やっぱり最初は大変だったかもね。最初っからいきなりは当然無理で、徐々に身についていったんだろうね。」

松下
「近藤さんから直々に教わることって今はもうほぼないと思うんですけど、セイジさんが近藤さんから教わったことで印象的なことってありますか?」

 

当時の様子を目を閉じて思い返すセイジ

セイジ
「うーん、そうだなあ、、、。その時のヘルツの制作っていうのは、すごく時間に追われて作っていたから、効率よく早く作るっていうのが徹底していた。追われていたっていう言い方だとあまり外向きに良いことではないと思うけど。無駄な作業とか、ダメなものはダメっていう感じで、そこは厳しく言われていたかな。あと、当時は少し遅くまで仕事をすることもあったから、夜食が出てみんなで食べたりもして。」

松下
「へえー、夜食!!昔ながらの職人の世界っていう感じですね。」

セイジ
「はは、今じゃもう想像もできないよね。」

松下
「でも時間の管理っていう点については、今のヘルツにもきちんと通じているのかなと思います。前回までの作り手のインタビューでも効率の話は度々挙がっていますが、ヘルツは一人で最初から最後まで作るから、時間の管理を大事にっていうのは創業当初から続いているんですね。」

セイジ
「そうだね。鞄のつくりからそうだと思うよ。『裏地をつけない』っていうこと一つ取っても、壊れないっていうこともそうだし、効率よくいいものを作るっていうのは、製品作りでも考えられているよね。いろんなつくりでも、シンプルに作れる構造、形っていうのは考えられているなって思う。」

 

ヘルツの鞄に込める思い

ヘルツの鞄に込める思い

松下
「セイジさんは普段どんなことに気を付けながら制作しているのでしょうか。」

セイジ
「そうだなあ、あまり綺麗にとは正直思っていなくて。鞄が完成した時の雰囲気とか、そういうのが一番重要だと思ってる。もちろんステッチも直線的で綺麗な方が良いとは思うけど、全部が全部整っているのが良いのかというと、俺はそうではないと思っていて。全部機械がキッチリ作ったような物ではなくて、一つ一つ作り手が一から作るから、ピッチが若干違ったりとか、手作りのぬくもりが感じられるんだと思う。

 

普段のセイジの制作風景

セイジ
「既製品みたいにすべてがキッチリ整っているのが、果たしてヘルツの鞄かなって思うと、ちょっと違うのかなって。気を付けなければいけないポイントはもちろんあって、程度もあるから、当然細かいところも大事にしてはいるけど。あまり細かいところだけを見るのではなくて、そこよりもヘルツらしい、完成した時の雰囲気が一番重要だと思うから、あまりそこを気にしすぎるのは違うかなって思う。妥協とは違くて、誤解が無いように伝わるといいんだけど、、、。」

松下
「なるほど、、、革もかなり厚くて糸も太いですしね。プラスチックみたいに真四角で機械のように直線的にはできないし、一人の人間が一から最後まで作るからこその、その人の手のぬくもりというか、ヘルツらしさも感じられるんじゃないかなと思います。」

セイジ
「ヘルツらしさ、ヘルツの鞄といえば、革が厚くてゴツくて重くて、っていうイメージはあるよね。この厚さじゃないと出せない雰囲気とか表情とかあると思うし、やっぱり一番は「綺麗さ」じゃなくて「丈夫さ」なんだと思う。ヘルツの鞄を使ってくれている姿を街中で見かけたりもするけど、やっぱりずっと使えるものだし、重さも使っていくうちに慣れて愛着が増してくると思うから、長く使ってもらえたら嬉しいね。」

 

お客様への思い

お客様への思い

松下
「NET工房って、実店舗があるわけではないから、お客様の顔が見れない工房じゃないですか。お客様も現物を見れない状態でオンラインショップで注文して下さって、それをここで作るわけですが、実店舗とオンラインショップの差を意識したことはありますか?」

セイジ
「そこはねえ、お店があってもなくても俺は変わらないかなあ。もちろん目の前にいたらそれは気にすると思うけど。(笑) ちゃんと壊れなくて丈夫でかっこいい鞄を作ろうと思ってやっているから、そこにお客さんが見える見えないは気にしていないし、関係ないと思う。NET工房として引っ越しする前、渋谷工房の頃、FACTORY SHOPっていうお店があったんだけど、その頃はお客さんと直接やり取りしていたから、まったくお客さんが分からないってこともなかったしね。」

 

2008年当時のFACTORY SHOP

(2008年頃の工房兼販売店舗。2019年11月現在は閉店しています。)

セイジ
「俺が入ってちょっとして、FACTORY SHOPをやろうかって近藤さんが言って。俺が初代店長みたいな感じで始まったんだよ。少しして別の作り手にバトンタッチしたんだけど。当時はいろいろ挑戦してみたなあ。革で近隣の案内図みたいなの作ったり。」

松下
「へえー!革の案内図、面白いですね!お客さんに喜んでほしいっていう気持ちが伝わってきます。」

 

当時、実際に作った革の案内図

(実際の地図。お客様への思いはもちろん、作り手も楽しみながら作り上げたのが伝わってきます。)

セイジ
「あとは、BC-16でいうと、FACTORY SHOPではスーパーカラー企画とかでよく作ってたね。」

松下
「確かに!スーパーカラー企画は、今でもとても人気ですね。」

セイジ
「固い鞄の中では当時からすごく人気だったね。ちょっと奇抜だけど、他にはない感じが魅力だったと思う。」

 

スーパーカラー企画でも人気のBC-16

(こちらは2016年頃に行われたスーパーカラー企画のBC-16。現品のみの限定販売品となっています。)
※限定販売品など、最新の在庫状況は、各店舗までお電話にてお問い合わせ下さい。

セイジ
「今は、直接お客さんの顔こそ見えないけど、たまに修理とかで戻ってきた鞄を見たりすると、お客さんが使ってくれている感覚っていうのはすごい伝わってきたり、大切に使ってくれているんだなって実感するから、そういう時はより気が引き締まるっていうのはあるかな。」

松下
「ああー、嬉しいですよね、修理で戻ってくるの。」

セイジ
「そうだね。結構クタクタになっても『まだまだ使いたいって思って送ってくれているわけだし。それに応えるというか、そういうものを作らなくちゃいけないなって思う。BC-16はとにかく壊れにくいいよね。ナスカン(金具類)はある程度摩耗して交換しないといけないけど、本体はすごく頑丈だから。少しでも長く使ってもらえたら嬉しいね。」

 

皆様に一言

皆様へ一言

松下
「思い出のBC-16ということで、ちょっと長くなってしまいましたが、最後に皆様になにか一言いただけますか?」

セイジ
「うーーん、、、(数分ほど熟考)。最近ヘルツは結構柔らかい革(スターレ)を使った鞄が多いけど、BC-16は昔からあるヘルツらしい鞄で。さっき言ったようにヘルツといえばこういう感じで、街中でちょっと離れたところから見ても、『あ、ヘルツの鞄だ!』っていう、そういう雰囲気がある鞄だと思います。あとは、なんだろうね、ちょっと重いっていうのは、、、魅力が詰まってるから重いんだよってことで。(笑)」

松下
「はは!なるほど!」

セイジ
ヘルツのみんなそれぞれが新しいものを生み出して、働いている人が作りたいものを作るっていうスタイルがヘルツの魅力だと思うんで、人それぞれ違う各々の作りたいっていう楽しさも大事だし、これからももっとやっていかないといけないと思っています。他にはないものを作ってワクワクしたりとか、長く使ってもらえるような鞄を生み出すっていうことを、これからもどんどんやっていきたいと思っているので、楽しみにしていてください。」

松下
「はい!有難うございました!!」

 

~ 次回予告 ~

NET工房作り手 板橋×普段使いのミニボストン(WH-406)をお送りします。
初めから使い込んだような風合いが魅力のウォッシュ加工、その魅力や制作風景が見れる、、、かもしれません。

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