こんにちは、HERZオンラインショップの松下です。
今回は、新作プチボワット(Q-12)を制作した作り手:村松にインタビュー形式でお話を伺いました。
村松
「この鞄を作ったきっかけは、おかまっちゃん(本店事務スタッフ)から『こういうサイズ感のハンドバッグが欲しい』っていう話があってね。じゃあハンドバッグ作ってみようかなって所から始まりました。」
松下
「そうだったんですね!何か具体的なデザインの要望は初めからあったのでしょうか?」
村松
「いや、そこまで具体的ではなかったです。これくらいのサイズ感っていうのと、錠前っていうリクエストはあったかな。でもそれだけで、その時俺もこういう樽マチの作りで鞄を作ってみたかったから、そのイメージをイラストで描いて『こういうのどう?』なんて話をしながら作っていきました。」
松下
「何気ない日常会話からスタートしていたんですね。樽マチの構造を作ってみたかったということですが、これはどういった所から湧き上がってきたイメージでしょうか?」
村松
「この作りはね、実はずいぶん前から試していたんですよ。かなり昔にボストンバッグでこの樽マチの構造で作っていて、それは定番化には至らなかったんだけど。この作りはまたいつかやろうってずっと考えていたんです。」
松下
「なるほど。マチが横から見ると楕円形になっていて、収納部がくり抜かれたようなデザインが、まるで宝箱のようだなって思ったんです。それで、この鞄の名前を調べたら『ボワット』ってフランス語で箱とか道具箱って意味のようで。」
村松
「そうなんです。俺の中でも『小箱』っていうイメージです。」
松下
「ピッタリですね!この鞄が持っているイメージとすごく合っている名前だと思いました。では、元々村松さんの中にあったイメージとスタッフのリクエストが融合して出来上がったような感じですね。」
村松
「そうだね。自分の中ではすごく新しいイメージっていう訳ではなかった。形自体はクラシックな形で、『古い錠前のハンドバッグ』っていうとこんな感じかなって。なので自分で工夫したのは、細かい作りの部分とサイズ感ですね。」
無駄のないこだわりの構造!
村松
「この鞄は、本体の二枚のパーツをどうやって重ねて作るかっていう、革の繋ぎ方や重ね方をすごく考えて作った鞄です。どこで繋いでどうやってまとめるか、何パターンもアイディアを出して、繋ぐ箇所や作り方を工夫した所がこだわりの一つです。」
松下
「へえー!すごい!パズルみたいですね。少し掘り下げてお聞きしたいのですが、どうして一枚革ではなくパーツを分けたのでしょうか。」
村松
「最初に作った時は一枚で作ったんです。その後に作りやすさや、物としてのまとまりの良さを重視して仕上げました。例えば、錠前の所。錠前の部分の革を二枚合わせにすることによって、表側の革に錠前を付けて、裏側の革で錠前の裏を隠しています。尚且つ、表側の革だけを長く伸ばして、そのまま後面のポケットにしています。」
村松
「それに二枚合わせでフチを揃えて一緒に縫うことで、取り出し口に強度が増すようにしてあります。ここが一枚だとふにゃっと弱々しい感じになってしまうので。」
松下
「同じパーツで何役も…!ぱっと見ただけでは全然わからない所ですが、すごく緻密な計算がされているんですね。」
村松
「もうひとつ、前面から底面にかけて革を二重にすることで、盤面にかなり強度を持たせることが出来たんです。鞄を手に持った時のカチッとした感触が気に入っています。
ひと言でいうと、『安心感』ってことですかね。」
小さくて可愛らしい、上品なレディースバッグ
村松
「実は、最初に作った時はもっと小さかったんです。それはそれですごく可愛らしい鞄だったんだけど、鞄の構造上、収納部の入口のサイズが2cmずつ内側に狭くなっているから、スマートフォンが入れにくいって話になって。それでちょっと大きくして、スマートフォンをスッと入れられるサイズ感に調整しました。」
松下
「なるほど~。出し入れのしやすさは鞄の大事なポイントの一つですね。」
村松
「最初に小さく作った時のサイズ感がすごく可愛いかったから、あんまり大きくしすぎずにこの可愛らしい雰囲気を残しつつ、でも使いやすいっていう丁度良いバランスを作るのが難しかったです。ただ横に伸ばしたり、高さを伸ばしたり、マチ幅もいくつか試したりして…。」
松下
「改めて見ると、本当に絶妙な大きさだと思います。まさしく『プチ』という可愛らしいサイズ感ですね。」
心ある鞄作りを
松下
「ヘルツでは今年に入って、新たに『サンプルルーム』がオープンしましたね。新作づくりの過程で生まれるサンプル品を集めたお店で、お客様からの想い、それから全国の作り手の想い、色んな人の想いが集まる場所でもあるわけですが、新作づくりの中でどういった影響を受けますか?」
村松
「今回の鞄で言うと、定番化する前のサイズ違いの物や、少し仕様が異なるものを実際にお店に置いていて、目の前でお客さんが『これ可愛い!』って購入してくれたりして、そういうことが自分にとって次の一個を作る大きなエネルギーになっていますね。そうしていろんな人の言葉を聞きながら作っていくと、段々と迷っていた部分の答えが見えてきたりします。」
村松
「そういう感じで自分にとってもエネルギーになっているし、お客さんから直接ご要望を頂くことで、ヒントを貰える場所でもある。全国の作り手にも『あの鞄、評判良いよ。また作ろうよ』とか言えたりして、ヘルツにとってのエンジンにもなってくれている場所でもある。そういう意味では、とてもポジティブな意味で影響を受けられる場所ではあると思っています。」
松下
「すごくヘルツらしいですね。ヘルツは創業当初からずっとお客様の目の前で鞄を作ってきて、すぐ反応が見える所で鞄を作り続けているので、今までもずっとそうだったと思うんです。それがサンプルルームという一つの集まる場所が出来たことで、より顕著になった印象があります。」
松下
「今回の新作鞄もそうですが、スタッフ同士やお客様など色々なことから刺激を受けながら、『時代や流行を問わず、丈夫で長く使える』ヘルツの鞄が作られているというのが良くわかりました。」
村松
「そうだね。ヘルツって最初は『自分が作りたい』から始まってはいるんだけど、今はたくさんのお客様の声もあって、それに応えたいっていう気持ちも正しくあるので、素直な気持ちでこれからも作っていきたいと思っています。」
シーンや年代を問わず、末永くご愛用下さい!
松下
「最後に、よかったらお客様に一言いただけますか?」
村松
「うーん、なんて言おうか…。」
松下
「私の個人的なコメントを言うと、年代を問わず幅広いシーンでお使いいただけると思います!若い世代の方にも合うクラシカルな可愛らしさもありつつ、ご年配の方にもすごく上品に寄り添ってくれる鞄で…。こういう時代を問わず道具として長く使える鞄っていうのは、まさしくヘルツらしいレディースバッグだと思います。」
村松
「松下さんそれ、松下さんの言葉でそのまま使ってほしいな。俺が言うとなんか気持ち悪いよね(笑)」
松下
「ええ!そんなことないのに!(笑)ちょっと熱く語ってしまいました、すみません。」
村松
「自分では納得のいく鞄が作れたと思っています。もしこの鞄を良いなって思って頂けたら、ぜひ末永く、沢山お使い頂けたら嬉しいです。」