縁の下の力持ち、革の裁断(カット)のお話
HERZの鞄作りで最も大事な工程
鞄作りというと、多くの人がまずイメージするのは、パーツを縫い合わせる縫製の工程だと思いますが、もちろんそれだけで鞄は出来上がりません。
どんな鞄でも最適なパーツを用意するというひとつ前の工程が必要です。
特に革本来の良さをそのまま生かすHERZの鞄作りでは、パーツ選びが仕上がりを左右する比重も大きく、とても大事な工程なのです。
その大事な工程をカット(革の裁断)チームが担当しています。
外からはなかなか分かりにくいカットの仕事。やっている方に聞くのが一番ということで、カット歴10年以上を誇るカットチームリーダーの作り手:鈴木に色々と聞いてきました。
カットの仕事紹介
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作り手:鈴木
カットの仕事紹介ですね。今の体制だと、厚い革(ラティーゴハードレザー)をカットする人が2人で、キャメルとそれ以外の4色で1人ずつ。柔らかい革(スターレソフトレザー)をカットする人が1人。
小物など、小さいパーツのヌキ(機械を使った裁断作業)を担当する人が1人ですね。先の製作予定を見ながら、それぞれが担当するバッグや小物の品番を確認して作業しています。
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作り手:野口
革の種類ごとに担当分けされているんですね。
では、製作と同じように1つのモノは1人の人がカットしているということですか?
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作り手:鈴木
基本的にはそうですね。
鞄のショルダーストラップなど、共通的なパーツはまとめて用意することもありますが、それ以外のほとんどを1人でカットします。
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作り手:野口
さきほどの4つの分担では、鈴木さんはどこを担当しているんですか?
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作り手:鈴木
担当しているのは、キャメル以外の厚い革のことですね。
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作り手:野口
てっきり、HERZのメインカラーと言えるキャメルかと思ったのですが、意外や別の革色なんですね。何か理由があるんですか?
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作り手:鈴木
大した理由じゃないんですが、キャメル以外の4色というと、革をストックする場所も4ヵ所必要で色々と憶えることが多いので、人に教えるより自分でやった方が効率がいいというぐらいですね。
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作り手:野口
なるほど。何色でもカット作業は変わらないですからね。では、次のターンではパーツに合った革選びについてお聞きしたいと思います。
革の選び方について
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作り手:鈴木
ん~、口で説明するのが難しいなあ!!
じゃあ、今日カットした鞄を例に言うと・・・(探した結果、ランドセル(チョコ色)になりました)。まずフタ、このパーツは一番大事です。ヘルツの鞄(特に厚い革の鞄)には、フタがかぶさっているデザインが多いのですが、その場合、フタが鞄の顔になる+フタに取っ手が付いて力がかかるモデルもあります。
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作り手:鈴木
なので、取っ手からの力に伸びにくい革を選びます。次にマチ、このパーツは作りやすさにかなり影響します。曲げた時にシワがたくさん出るような革では、貼り付けや縫製がやりにくいので、結果として、鞄の仕上がりにも影響することがあります。作りやすい革をカットしておくことで、鞄の仕上がりが良くなるということを意識していますね。
同様に、ポケットのフタなんかも曲げた状態でフタが閉まる構造が多いので、均一に曲がる革、曲げてもシワが少ないということを気にしています。あとは、ショルダーストラップや錠前などを付ける前ベルト、取っ手などですが、伸びてしまうと長さがズレてしまったり、丈夫さに影響するので、特に伸びにくい方向を意識しています。
解説
「革には必ず繊維の方向=伸びやすい方向があるので、力のかかる方向には伸びにくくなるよう向きを選ぶ」
「よく曲がるパーツはしなやかな部位、そうじゃないパーツには逆に硬い部位を選ぶ」
※ここで言われる質が良い革とは、革の繊維が均一でギュッと締まっている部位のこと。
HERZの革について
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作り手:鈴木
解説にもあるように、HERZでいう質の良い革は表面にバラキズや血筋のない、見た目で綺麗な革ではないんです。長く使う上で、それに耐えうる質の革のことを言っています。
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作り手:野口
その都度、革の状態を判断して、カットしていくのは確かに大変そうですね。
最近は仕入れている革の品質も安定していないという話も聞きますが、その辺はどうですか?
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作り手:鈴木
そうですね。確かにここ何年かで、革質は安定していない印象を受けますね。これは革屋さんからよく聞く話なんですが、日本の原皮(なめす前の状態の革)消費量も減っていて、より質のいい原皮を選別するのも難しいらしいですね。
具体的に感じるのは、HERZに入ってくる革も血筋(血管の痕)が目立つ革が多い気がしますね。ただ、血筋やバラキズがあっても革質が良い所はヘルツでは使用するようにしています。個人的には、むしろそういう自然の表情が入った鞄の方が僕は好きです。
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作り手:野口
色についてはどうですか?
お店で見て思うのは、特にキャメルの色味にばらつきがあると思いますが、これは何か原因があるのですか?
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作り手:鈴木
これも革屋さんからの情報でしかなくて、確かなことは言えないんですが、同じ染め方をしても天候や原皮の状態で染まり方が変わるらしいですね。結果としては、ロット(約30枚で1単位)ごとに色味が変わっています。
まあ、色に関してはあまりに違和感がある時は、染め直してもらうこともありますけど、キズや血筋が多いなどは革屋さんに言っても仕方のない部分なので、できるだけカットの仕事の中で工夫して使うようにしています。例えば、すごくキズが多い革でもパーツの取り方によって無駄なく使うようにするということですね。
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作り手:野口
鈴木さんはかなり革を大事に扱いますよね。 そこに何か思いとかあれば教えて下さい。
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作り手:鈴木
革も元をたどれば生き物だったわけなので、無駄にしてはいけないし、革屋さんもキャリア何十年という、プロの方が革をなめしてくれてるわけなので、出来るだけ無駄なく全て使いきるということは常に思っています。
すごく小さく残った革でも、質が良い部位であればいつか使えると思って、袋にストックしていたりもしますね。 おかげで捨て切れない革が溜まって困ったりもするんですが・・・(笑)。
鈴木は一日何メートルの革をカットするのか!?
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作り手:鈴木
今まであまり意識したこともないな(笑)。
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作り手:野口
ですよね~。副題である通り、鈴木さんが一日何メートル革を切っているのか調べてきましたよ。
型紙から追ったのでバッチリですよ。何メートルくらいだと思います?実感として。
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作り手:鈴木
50メートルくらいじゃない?
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作り手:野口
ではでは・・・。
正解は194メートルです。
これは機械類は使わずに手でカットしている長さだけの合計ですね。
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作り手:鈴木
うわー、そんな切ってんだ!!
ホント50メートルくらいかと思ったよ。どおりでたまに手首が痛いわけだよ。それにしてもすごいなー。
100メートルをただまっすぐに切ってくれって言われたら、絶対無理だよ(笑)。そんなに切ってんだあー。
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作り手:野口
ちなみに、総かぶせ・横型2wayビジネスバッグのLLWサイズは、1本で17メートルあります。
では、鈴木さん。
最後にカットとして、 ヘルツの鞄を使っていただいているお客様にメッセージがあれば、お願いします。
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作り手:鈴木
そうですね~。
何度も言っていますが、革は生き物で、いろいろな人の、いろいろな手間を経て一枚の革に仕上がっています。そう思って革を扱っていると、自然と革を大事にしなければと考えるようになるんですね。だからって、ヘルツのお客様がそこまで考える必要はないと思うのですが、ただ、愛着を持って鞄を使ってもらえたら嬉しいなあと思いますね。
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