「作りたい! 楽しい!」で走り続けた40年
2014年で40周年を迎えたHERZ(ヘルツ)。
そもそものはじまりは、創業者である近藤晃理の、「作りたい! 楽しい!」でした。
引っ越すんだけど物置にあった革、いらない?
それがHERZのはじまりです。近藤がHERZ創業前に勤めていたデザイン会社の同僚からもらった一枚の革。「えー革ってこんなんなってるんだ」とかいいながら、そこで初めて革を知ることに。
その革で、建築用の製図とか、デザイン画とかを入れるB3サイズの大きい革袋を作って、取引先に運んでました。
革の袋を作るのがすごく楽しかったのと、先方に行くと仕事の内容よりもその革袋の方を褒められたりして、それがすごく嬉しかったようです。
これが仕事になったらどんなに楽しいだろう!作りたい!それがHERZ誕生のきっかけでもあり、原点なのでした。
「楽しい!」から始める鞄屋
「一枚の革」をもらってからというもの、自分で立ち上げたデザイン会社の仕事の合間を見つけては、趣味程度に細々と革の袋を作る日々を送っていた近藤。
そんなある日、大学の同級生に、「共同で赤坂に創作する場所を借りない?」と持ちかけられたことがきっかけで、それなら本格的に鞄作りをしたいなと思うようになったのです。ミシンがなかった当時は、からげた鞄やカシメで豪快に留めたバッグが多くみられます。
HERZの誕生
本格的に鞄作りを始めた矢先、どうしても必要だったのが鞄屋の「名前」。
これがどうしても決まらず、何日も悩んだあげく、ついにある日、辞書で開いたページのなかからぜったい決める! と決意。何の因果か、外国語辞典「H」から引き出されたのが、「HERZ」でした。
『HERZ:心(ドイツ語)』 名は体を表す。
その屋号に引っぱられてか、結局、作ったものにその人の「心」が、そのまま込もるような鞄を作りつづけることになります。
赤坂時代 その1
そうして、赤坂にある半地下駐車場(ガレージ)を、半分はテキスタイルの友人、半分を近藤が革鞄工房&デザインの場として改装し、使い始めたのでした。
ミシンなどの機材を手に入れたこの頃から、いまでも定番商品に残る鞄たちの原型がたくさん誕生しました。
赤坂時代 その2
ちょうどこの頃、銀座と新宿に鞄を取り扱ってくれるお店が見つかりました。というのも、やっぱり鞄が売れないと鞄が作れないぞ、という焦りから。
だけど、鞄の売り方なんて何にも知らなかった近藤は仕上がった鞄を持ち歩いては、「鞄作ったんだけどどうですか? 売ってくれませんか?」と練り歩いたのでした。
もちろん、インターネットなんてない時代なので、現物を見てもらうのが一番。それで、最初は、「日本一高級な商店街」銀座へ。次に大きい新宿という具合に。
「非常識だ」とか、むげに「いらない」とか、だいたいはそういう反応だったらしいですが、その中でも面白がってくれる鞄屋さんもいてくれ、ありがたいことに取引をしてくれるようになりました。取引先も個人商店だったことから、とても良く接してくれ、商品はもちろん、運営についてのアドバイスなども色々してくれたようです。
更にこの頃、雑誌に取り上げられたこともあり、その時はすごい反響だったようです。近藤曰く、今考えると、これがHERZの大きなターニングポイントの一つだったとのこと。
掲載されてからは、全国から「すごい」「教えてください」という手紙が沢山きたようです。鞄は一向に売れないのに、「教えて欲しい」という人が沢山。
でも雇うことはできないので、面白そうかも!!と思って教室を始めたところ、結構人気があったようで、ピーク時には20~30人くらいの生徒さんがいました。
毎日、作りたいものを作っては、売れたときにみんなで喜んで、わいわい喋る日々。この雰囲気が今のHERZの基盤にもなっているのでしょう。