作り手の旅に使いたいを作る「旅モノ2019」
ヘルツで定期的に行っている「旅モノ」企画。今回もスタッフそれぞれの旅に使いたいアイテムが多数揃いましたが、この特集ページでは、作り手とともに自身が作った旅モノにフォーカスしてご紹介していきたいと思います。
QUJIRA(TB-1906)
今回の旅モノの中で最も大きな鞄の部類に入る「QUJIRA(TB-1906)」。機内にも持ち込めるサイズ感。このリュック一つで、全て完結できるような機能と工夫・容量を備えたビッグサイズのオールインワンリュックです。 作り手は過去に多くの定番品を生み出している木村。このバッグができるキッカケや特徴、実際に旅に使用した感想などを作り手本人に話してもらいましょう。 QUJIRA(TB-1906)の商品ページはこちら-
聞き手:小野寺今回は木村が作った旅モノ「QUJIRA(TB-1906)」について色々聞きたいと思います。
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作り手:木村よろしくお願いします。
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小野寺毎回、旅モノでは個性的なバッグを作っている印象が強いけど、今回も名前からしてユニーク(笑)。はじめにQUJIRAを作ったキッカケを教えてください。
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木村はい。旅モノを作る時は毎回悩みますが、なんだかんだ模索した結果、「以前に自分が作ったビートルリュック(R-3)の豪華版を作ろう」という考えに至りました。でも単純に拡大じゃない。そんなコンセプトでスタートしました。
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小野寺たしかに見た目は完全にビートルリュック(上写真)の踏襲だね。でも細部は全然違う。ファーストサンプルを見た時は、とにかくデカいな~って印象が強かったけど。
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木村はい、この大きさがQUJIRA(クジラ)たる由縁です(笑)。 何事も事の始まりに一番想像力を使います。何を作ろう、リュックがいいなと思い、通常作業中に考えてみたり、営業終了後の店内を歩いてみたり・・・悩むこと丸3日。
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木村なんだかんだで「ビートルリュックいいな」と。起点はここからでした。
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小野寺みんな自分がデザインした鞄は好きだと思うけど、木村はちょっと偏愛だよね(笑)。ビートルがまだ定番品になる前、元旦からこのリュックと一緒に温泉旅行に行ったけど、あれはもう僕の中では苦い思い出です。 カブトムシリュックと温泉旅行ブログの詳細はこちら
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木村まぁまぁ、そう言わず。話を旅モノに戻しましょう。
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木村とりあえずメモ紙にビートルリュックを。ここから変型させていきます。なんとなくビートルリュックデラックス版のスケッチが書けました。イメージしやすいように拡大コピーして細部を詰めていきます。
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小野寺毎回こういったイメージスケッチから新作を作るの?
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木村いえいえ、作り方にテンプレのようなものはありません。今回はスケッチというか、落書きから入りました。
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木村以前のブログ「日々を積む No.104」でもありましたが、粘土で造形してイメージを膨らませることもあります。 スケッチに戻りまして、、、横のポケットにはペットボトル?背中はランドセルのようにクッションをいれたい!始まりはこのような形でした。
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小野寺スケッチを見る限り、かなりごちゃごちゃしそうな感じに見えるけど。
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木村そうです、このごちゃごちゃ感がいいんです!デラックス感があって。 あくまでイメージの叩き台となるもので、様々な構造上の矛盾をはらんでいます。その矛盾を一つ一つ手探りでクリアしていく作業がたまらなく面白いです。
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小野寺なるほど。新しい物を作る時の作り手の考え方が少し分かった気がする。
QUJIRAのテーマは3点
顔はビートルリュック
この鞄のみで旅する
容量は座席100席以上機内持ち込みサイズ
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聞き手:小野寺この3点が骨組みとなったようなので、深掘りしていきましょう。
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作り手:木村そうですね。まず顔はビートル、これは後でなんとかなります。問題は構造です。 ビートルリュックの構造はデイパックサイズだからこその利便性だと考えました。ファスナーで大開閉も問題ありません。 しかし今回はこの鞄一つで行きたい。だから大容量にしたい。具体的には機内持ち込みサイズのキャリーバックサイズのリュック。大容量が故にガバっと全開にしてパッキングをしたい。まるでトランクのように。
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小野寺昔はヘルツでトランクを作っていたことがあったけど、それは参考にしたの?(※現在は販売しておりません)
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木村はい、そうなんです。トランク、本店のディスプレイ(非売品)である事を思い出して、じっくり研究しました。
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木村分厚いハンドルに頑丈な本体、そしてガバっと開閉。
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木村これです。荷崩れ止めのベルトにより、パッキングも容易です。
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小野寺完成品のQUJIRAにもついているね。
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木村そうです。トランクとビートルリュック 、向かうべき方向が分かりました。 そして基本構造のミニチュア版で作ったのがこれです。
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木村確かな手応えを感じつつ、ここから始まるであろう膨大な取捨選択に一人気分が高まりました。
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小野寺このイルカちゃんからよくクジラにもっていったね!
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木村たしかにイルカちゃん(笑)。しかし侮るなかれです。ミニチュアと向き合い想像し、検証し、修正し、細部まで練っていきます。 目の前のミニチュアがなんとなくですが、自分にはこう見えていました。
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木村おぼろげながらこれが形にできたらいいなと。
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小野寺ミニチュアの時点でここまで想像してたの!?頭の中ではかなり完成形が見えていたってことかな。
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木村そうだと思います。構造はこれでいこうと思いましたが、サイズ感を見たくて簡易的な模型も作りました。
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小野寺ダンボールとガムテ!DIY満載で親近感が湧きます。
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木村大事なのはサイズ感なので・・・これを叩き台にして次は革におこします。
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木村トランクの要素とビートルの要素、いい具合に折衷できたと思います。
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小野寺これだけを見ると、クジラというよりも車?メカっぽい印象だなぁ。
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木村言われてみるとそうですね。実寸大で作ってみると、左右のポケットに不具合があることが分かりました。 今回はデイパックではなく、トランク的なリュックです。 つまり日常使いを想定しているデイパックよりも内容量パンパンに荷詰めする可能性があります。
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小野寺内容量をパンパンにすると、この試作鞄の左右のポケットではマチがないから使いずらくなるってことね。
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木村はい。したがって立体的なポケットにする必要がありました。 そしてこれが改良版です。
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木村縦横比とマチも変え、ポケットも立体ポケットに変更し、鞄の中がパンパンでも外ポケットはちゃんと機能する仕様に変わりました。 実際に研修で持参した試作QUJIRAがこちらです。
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小野寺旅モノ完成版との違いは左右対象のポケットになってるところだね。
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木村最初は左右2部屋の仕様でしたが、どうしても折り畳み傘を入れたくなり、広くとりました。雨に打たれて染みもつきましたが、個人的には好きなエイジングとなりました。
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木村ここまでがQUJIRAができるまでです。たとえ最初のイメージから離れたとしても取捨選択でやっと形になりました。
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小野寺お疲れ様でした!正直、個人的にはあまり好きな鞄ではなかったけど、こうやってQUJIRAができるまでの話を聞くと、勝手に愛着を感じます。
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木村そう言ってもらえて嬉しいです!
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木村使い方としては、家から旅先に向かうまではメイン収納部をあける事なく、外の大小のポケットで完結し、旅先では180度開閉してパッキング。そしてまた家路までは外のポケットで済むような使用イメージです。
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木村個人的に気に入っている部分は背中のクッションです。ランドセルで実績があるし、実際使うとやはり背中が楽でした。
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小野寺大きい鞄だと特に効果を感じるだろうね。 ビートルリュックとランドセルとトランク 、これらの要素をうまく取り入れた鞄がQUJIRAってことで良いでしょうか?
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木村その通りです。ランドセルの背負い心地でトランクのような大容量。そしてビートルリュックのような革の立体感。取捨選択をしつつも、色々詰め込みました(笑)。
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小野寺どんな方に使って頂きたいとかは考えたの?
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木村そうですね~。まず、背負える旅行鞄をお探しの方には是非とも使って頂きたいです。見た目通り大きなリュックなので、特に大柄の方はお似合いだと思います。 あと既にビートルリュックをご愛用頂いている方、他と違った革鞄をお探しの方、QUJIRAいかがでしょうか。
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小野寺売り込むなぁ(笑)。でも、その通りかもしれない。万人にうける鞄ではないし、ニッチだけど、こういったリュックをお探しになられていた方には是非使って頂きたいですね。
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木村はい!作るのも背負うのも楽しい、そんな鞄です。旅のお供に是非!
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小野寺長いインタビューになりましたが、皆さん最後までご覧頂き、ありがとうございます。
おわりに
旅の楽しみ方は人それぞれ。使う鞄も十人十色です。
ヘルツの旅モノ企画は2009年からスタートし、1~2年に一回のペースで実施しています。毎回作り手それぞれの作りたいや使いたいを体現した個性的な鞄や小物が生まれています。一部アイテムは後に定番化されることもあります。
今回ご紹介した「QUJIRA(TB-1906)」が今後どうなっていくかはまだ未定ですが、作り手の想いや拘りが詰まった旅モノ、是非とも店頭でご覧頂けたら嬉しいです。その大きさを背負って感じてみて下さい。ご来店が難しい場合は、オンラインショップの商品ページに詳細を掲載しておりますので、吟味して頂ければ幸いです。
- 旅モノ商品はヘルツ各店舗で販売をしておりますが、全ての商品を取り揃えてはおりません。現物をご覧頂く場合、事前にお近くの店舗までお問い合わせをお願いします。
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